外に出られない親の散髪、どうする?訪問理美容という選択肢
「美容院に連れて行きたいけど、もう難しくて…」 「髪もヒゲも、どんどん伸びてきているのが気になる」
こう感じているご家族の方は、少なくありません。 身だしなみを整えてあげたい気持ちはあるのに、手段が見つからないと焦りますよね。
今日は「訪問理美容」という選択肢について、仕組みから探し方まで、ひととおり整理してみます。
訪問理美容とは?
理容師または美容師が、ご自宅や入所施設に出向いて施術してくれるサービスのことです。
できること(お店によって異なります):
- カット(髪の毛を切る)
- シャンプー・ブロー
- カラーリング(染め)
- 顔そり(理容師さんの場合)
- 整髪・セット
「寝たままの状態でも対応してもらえる」 のが大きな特徴です。ベッドに横になったまま洗髪できる専用の器具を持参してくれる業者さんも多いです。
美容院に行けない理由は人それぞれです。 歩くのが難しい、車いすに乗るのが大変、長時間座っていられない、認知症で場所の移動が混乱を招く…。そういった状況でも、「身だしなみを整える」という当たり前のことを、住み慣れたおうちで受けられるのが訪問理美容の本質です。
料金の目安は?
料金の構成イメージ:
- 施術代:カットのみなら3,000〜5,000円前後
- 出張料:1,000〜3,000円前後(距離や業者による)
- 合計:カットでおよそ4,000〜8,000円前後が目安(パーマ・カラーは追加)
パーマ・カラーは施術時間が長くなるため、それぞれ追加費用がかかります。 金額は業者さんによって大きく異なりますので、依頼前に必ず確認することをおすすめします。
自治体の助成制度がある地域も
助成の一般的な条件例(自治体により大きく異なります):
- 対象:寝たきりの方や、要介護度の高い方など(「要介護○以上」という基準は自治体によって異なります)
- 助成の形:「1回あたり◯◯円の補助券を年◯回まで」という形が多い
- 申請先:市区町村の高齢者福祉課、地域包括支援センター、社会福祉協議会(社協)など
お住まいの地域で助成があるかどうかは、地域包括支援センターかケアマネジャーに確認するのがいちばん早いです。
参考までに、わたしが関わっている地域では、社会福祉協議会がこんな形でやっています。
- 対象:要介護3〜5の方、または身体障害者手帳1級・2級で下肢か体幹に障害がある方
- 回数:期間内に2回まで
- 費用:2,500円までを社協が負担。それを超えた分は自己負担
- 申し込み:申請書に、介護保険証か身体障害者手帳のコピーを添えて社協へ
ここで、気づいた方もいるかもしれません。 カットの代金が4,000〜8,000円だとすると、2,500円の補助が出ても、足は出ます。そのうえ回数にも限りがある。 「助成があるから安心」とまでは言えないのが、正直なところです。
実際には、選ばない方もいます
見送る理由は、お金だけではありません。
- 料金が高い……いちばん多い理由。助成があっても足が出ることが多い
- お店ほどのサービスにはならない……シャンプー台も鏡も、お店と同じにはできない。「せっかく頼むなら」と思うと、物足りなく感じることがある
- 家族で足りてしまう……前髪をそろえる、短く刈る、くらいなら家でもできる
これは、我慢でも手抜きでもありません。 限られたお金と時間の中で、何にどれだけ使うかを決めるのは、ご家族です。プロに頼まなかったことに、うしろめたさを感じる必要は、まったくありません。
そのうえで、こういうときは頼む値打ちがあります。
- 洗うところまでお願いしたいとき……寝たままの洗髪は、ご家族の負担がいちばん大きい部分です
- 顔そりもしてほしいとき……かみそりを使う顔そりは、ご家族には難しい
- 久しぶりに人に会う予定があるとき……受診、外出、法事、写真を撮るときなど
「全部お願いする」ではなく、「ここだけお願いする」という使い方もできます。年に一度か二度、そういう日のために使う、と決めているご家族もいます。
通っている先で、受けられることもあります
ただし、どこのデイサービス・ショートステイでもやっているわけではありません。事業所によります。
料金は介護保険の利用料とは別で、実費です。理美容の代金を、そのつどお支払いする形になります。
お使いの事業所でやっているかどうかは、その事業所の相談員さんか、担当のケアマネジャーに聞くのがいちばん早いです。「うちのデイ、理美容って来ますか?」のひとことで済みます。
通っている日のついでに済ませられるので、そのために予定を別に空けなくていいのは、ご家族にとって小さくない違いです。
どうやって探せばいい?
訪問理美容の探し方:
- インターネットで「訪問理美容 + 地域名」で検索する(いちばん早い。思ったより見つかります)
- ケアマネジャーに相談する(担当がいる場合。助成の話もまとめて聞けます)
- 地域包括支援センターに相談する(担当ケアマネがいない場合も対応してくれます)
- 社会福祉協議会(社協)に問い合わせる(助成をやっているのが社協のこともあります)
ケアマネジャーが特別なリストを持っているわけではありません。同じように調べて、お伝えしていることが多いです。だから「まず誰かに聞かないと動けない」ということはありません。ご自分で探して、直接お電話してかまいません。
なお、訪問理美容は介護保険のサービスではないため、ケアマネジャーが手配できる範囲外になる場合もあります。ただし、情報提供はしてもらえますので、相談してみるのもよいと思います。
在宅でのケアを幅広く活用することで、ご本人の生活をより豊かにすることができます。 ほかにもどんなサービスが使えるか知りたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。
→ 訪問介護ってなに?ヘルパーさんに頼めること・頼めないこと
身だしなみが整うと、気持ちも変わる
最後に、少し大切な話をさせてください。
訪問理美容を利用した後、「お父さんが鏡を見て笑った」「久しぶりにすっきりした顔になった」という声をよく耳にします。
見た目を整えることは、単に髪を切ることではありません。
髪やヒゲが整っているだけで、「自分はちゃんとしている」「大切にしてもらっている」——そんな気持ちを取り戻すきっかけになることがあります。これは、その人の尊厳にも直結する大切なことです。
最近では、髪だけでなく、ネイルやメイク、肌やお顔のお手入れまで含めて、高齢のかたの「きれいになりたい」という気持ちを支える「介護美容」という考え方・サービスも広がっています。訪問でこうしたケアを受けられるところもあり、「整える」ことそのものが、心を元気にするケアとして注目されています。
介護されている側の方も、「また来てもらえるかな」「今度はどんな髪型にしよう」という楽しみができると、日々のメリハリが生まれることがあります。
ご家族の方にとっても、「きれいにしてあげられた」という安心感は、きっと小さな支えになるはずです。
まとめ
今日のポイントをまとめると:
- 訪問理美容=理容師・美容師がご自宅や施設に来てくれるサービス
- 寝たままの状態でも対応できる業者もある(対応範囲は業者による)
- 費用の目安=カットで施術代+出張料およそ4,000〜8,000円前後(パーマ・カラーは追加・業者差あり)
- 自治体や社協の助成がある地域も(対象・回数は地域によって異なる。助成があっても足が出ることが多い)
- 料金を理由に見送るご家族も多い。ご家族が自分で切るのも、まったく普通のこと
- 頼む値打ちが大きいのは=寝たままの洗髪・顔そり・人に会う予定があるとき
- 探し方=ネット検索(「訪問理美容 + 地域名」)・ケアマネ・地域包括・社協
助成の有無や利用条件は自治体によって大きく異なります。 詳しくはお住まいの自治体や地域包括支援センター、担当のケアマネジャーにご確認ください。 費用・サービス内容も業者により異なりますので、依頼前に直接お問い合わせいただくことをおすすめします。
「親の髪が気になっていたけど、こんな手があったのか」と感じていただけたなら、うれしいです。
よくある質問
自宅で切ってもらうのは、法律的に大丈夫なの?
はい、問題ありません。理容師・美容師は本来お店で施術しますが、病気・けが・寝たきり・認知症などで外出が難しい方に対しては、法律で自宅や施設に出向いて施術してよいと定められています(理容師法・美容師法と、厚生労働省の通知)。資格を持ったプロが、決まりの中で来てくれるので、安心して大丈夫です。
寝たきりでも、髪を洗ってもらえますか?
はい。ベッドに寝たまま使える洗髪用の器具を持ってきてくれる業者が多く、横になったままの洗髪に対応してもらえます。カットだけでなく「さっぱり洗ってほしい」も相談できます。
介護保険は使えますか?
いいえ、訪問理美容は介護保険の対象外で、費用は自己負担になります。ただし、お住まいの自治体によっては助成券(クーポン)が使えることがあります。地域包括支援センターやケアマネジャーに確認してみてください。
ヘルパーさんに、髪を切ってもらうことはできますか?
髪を切ってもらうことはできません。髪を切るのは「理容・美容」にあたり、仕事として行うには理容師・美容師の免許が必要と法律で決まっているためです(理容師法・美容師法)。
免許のない方が仕事として髪を切ると、罰金の対象になります(理容師法では30万円以下の罰金と定められています)。悪気なく「ついでにお願い」と言ってしまうと、ヘルパーさんを法律違反の立場に立たせてしまいます。ここだけは、お願いしないであげてください。
ひげそりや、髪をとかす・整えるといった日ごろのお手入れは、ヘルパーさんにお願いできます。かみそりを使う「顔そり」は理容師さんの仕事になりますが、電気シェーバーでのひげそりは、ふだんの身体のお手入れとして対応してもらえます。
認知症があって、じっと座っていられなくても頼めますか?
頼めます。認知症のかたへの対応に慣れた業者も多く、短い時間で切る、体調や機嫌に合わせて進めるなど、その方に合わせてくれます。予約のときに、本人の状態(じっとしているのが難しい など)を先に伝えておくとスムーズです。
顔そりもお願いできますか?
顔そり(かみそりを使うもの)は理容師さんの担当になります。美容師さんはカット・カラー・セットなどが中心です。「顔そりもしてほしい」場合は、理容師さんが来てくれるか、依頼のときに確認しておくと安心です。
家族が髪を切ってあげても大丈夫ですか?
ご家族が切ること自体に、問題はありません。むしろ、料金を聞いて「だったら自分で切る」と決めるご家族は、とても多いです。バリカンを買ってきて、思いきって短くされる方もいます。
ただ、寝たきりの方や体を動かしにくい方の場合は、安全面や後片付けのことを考えると、訪問理美容を利用したほうが安心なこともあります。「前髪だけ」「少しそろえるだけ」ならご家族で、しっかり整えたいときや洗うところまでお願いしたいときはプロに、と使い分けるのもおすすめです。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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