シャワーヘッドを替えると、高齢の親のお風呂はどう変わる?
「親のお風呂を、少しでもラクにしてあげたい」
そう思って、シャワーヘッドの買い替えを調べはじめる方は多いと思います。ただ、出てくるのは美容や節水の話ばかり。「高齢の親に使うなら、どうなんだろう」という目線の情報は、なかなか見つかりません。
しかも決して安い買い物ではありません。「これで本当に喜んでもらえるのかな」と、カートに入れたまま迷ってしまう。そんな方に向けて書きます。
先に結論を言います。介護の場面では、替える価値は十分にあります。しかも、美容目的で言われている良さとは、少し違うところが効いてきます。
替えると、ここが変わる
① こすらなくても、汚れが落ちる
年を重ねると、皮膚は薄く、乾きやすくなります。それなのに「しっかり洗わないと」とタオルでゴシゴシこすってしまうと、かえって皮膚を傷めてしまいます。
細かい泡による洗浄力を特徴にしているシャワーヘッドもあります。強くこすらず、やさしく洗う。その方向に持っていきやすいことが、皮膚が弱くなってきた親御さんには、いちばん大きいと思います。
洗い上がりのつっぱらない感じを「保湿感」と呼んでいて、メーカーもそこを説明しています。医学的な効果として言い切れるものではありませんが、こすらずに洗える、という一点だけでも十分に意味があります。
お風呂上がりに「背中がかゆい」「ひりひりする」と言われることが減れば、それだけで入浴の時間は変わります。乾燥した皮膚をこすらずに済むことは、そのままご本人の心地よさにつながります。
② 手元で止められる
ヘッドに止水ボタンが付いているタイプがあります。
介助しながらだと、体を支える・タオルを取る・石けんを流す、と手が足りません。手元で止められると、そのたびに蛇口まで戻らなくて済みます。美容のレビューでは「節水になる」としか書かれませんが、介助する側にとっては、手が一本増えるようなものです。
浴室でいちばん危ないのは、支えていた手を離す瞬間です。蛇口をひねりに行くために体から手を離す、その一回が減るだけでも、ずいぶん安心して介助できます。
※手元止水タイプは、水栓の種類によっては使えないことがあります。購入前に、自宅の水栓に対応しているかを確認してください。
③ 座ったままでも、しっかり当たる
シャワーチェアに座ると、立っているときより浴びる位置がぐっと下がります。上から流すだけでは背中に届かず、何度もヘッドを持ち替えることになりがちです。
お湯が広がって出るタイプは、座っている人の背中や肩まで届きやすくなります。シャワーチェアを使っているご家庭では、この差がはっきり出ます。
あわせて、ホースを長いものに替えたり、ホルダーを低い位置に足したりすると、さらに使いやすくなります。こちらは数百円から数千円ででき、効果もすぐに分かります。
施設でも使われています
以前わたしがいた職場の併設の特別養護老人ホームでも、シャワーヘッドを替えて使っていました。
もともとは節水が目的だったそうです。ただ、実際に使っていたスタッフに聞いてみると、汚れはやはり落ちる、保湿もいいらしい、と言っていました。
導入は5年ほど前なので、今のモデルとは違うかもしれません。それでも、毎日たくさんの方の入浴介助をしている場所で選ばれて、使い続けられていた。これは一つの目安になると思います。
売り場で見ておきたい、3つ
たくさん並んでいると、どれも同じに見えてきます。介護で使うなら、この3つが付いているかどうかを見ると選びやすくなります。
手元の止水ボタン
ヘッドを握ったまま、親指で押せる位置にボタンがあるものを選んでください。同じ「止水付き」でも、持ち替えないと押せない位置にあるものは、介助中には使いにくいです。売り場で持てるなら、片手で握って押せるかを試してみるのがいちばん確実です。
水流の切り替え
やわらかいミストと、しっかりした水流を切り替えられるタイプがあります。頭を洗うときは強め、体はやわらかく、というように使い分けられます。ご本人の好みは日によっても変わるので、切り替えができるものは長く使えます。
ホースの長さと、ホルダーの高さ
見落とされがちですが、ここが効きます。シャワーホースは1.6メートルくらいが標準で、2メートル前後の長いものも売られています。座って浴びるなら、長いほうが取り回しがラクです。
ホルダーも、低い位置にもう一つ足しておくと、座ったまま手を伸ばして掛けられます。ヘッド本体より安く済んで、効果はすぐ分かります。
気をつけたいところも、正直に
いいことばかりではないので、ここも書いておきます。
自費になります。 シャワーヘッドは介護保険の対象ではありません。値段は数千円のものから、5万円を超えるものまで幅があります。
安すぎるものは、お湯の量が足りないことがあります。 わたし自身、自宅で5,000円くらいのものを使ったことがあるのですが、水圧が少なすぎて、洗っている感がありませんでした。ちょろちょろお湯が流れる感じ。あとやはり、冬は寒い。体にかかるお湯が少ないと、それだけで冷えてしまいます。
湯あたりがやわらかい分、物足りなく感じる方もいます。 ザーッと強く浴びたい方には、最初は頼りなく感じるかもしれません。水流を切り替えられるタイプなら、その日の気分や洗う場所で強さを変えられるので、迷ったらそちらを選んでおくと安心です。
替えたあと、もっと気持ちよくするコツ
せっかく替えたなら、使い方を少し工夫すると、良さがはっきり出ます。
入る前に、浴室を温めておく
新しいシャワーヘッドで先にお湯を流して、壁や床を温めておきます。浴槽のフタを開けておくのも手です。浴室が温まっていると、体にかかるお湯の温かさがそのまま伝わります。同じお湯でも、感じ方がまるで違います。脱衣所も、入浴前に暖めておけると安心です。
最初のひとかけは、足元から
いきなり肩や背中にかけると、ご本人はびっくりします。足元から順に上げていくと、体がゆっくり慣れていきます。細かい泡の出るシャワーヘッドは湯あたりがやわらかいので、この順番と相性がいいです。
浴槽につかるなら、湯温は41度以下を目安に
消費者庁は、高齢の方の入浴事故を防ぐために、浴槽の湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にと示しています。熱いお湯のほうが温まる気がしますが、体への負担は大きくなります。
これは浴槽につかる場合の目安です。シャワーの温度をここまで下げる必要はありませんが、湯船に入る日は思い出してください。ぬるめでも、しっかりお湯がかかっていれば、ちゃんと温まります。
いっしょに使うものには、介護保険が使えます
シャワーヘッドそのものは自費ですが、あわせて使うものには介護保険が使えます。
シャワーチェア(入浴用いす)、浴槽手すり、浴槽内いすなどの入浴補助用具は、肌に触れるものなのでレンタルではなく、購入費の一部が戻ってくる形の対象です。手すりの取り付けや、滑りにくい床への変更は、住宅改修が使えることもあります。
座って、手元で止めながら、しっかりお湯をかけられる。この形がいちばんラクです。どれが使えるかは、担当のケアマネジャーか福祉用具専門相談員に相談してみてください。
介護保険で借りられるもの・買えるものは、福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子までにまとめています。浴室の安全そのものが気になる方は、親の転倒が怖い。家の中の危険を家族が見直す方法もあわせてどうぞ。
まとめ
親のお風呂が「気持ちよかった」で終わる日が増えること。それが、入浴を嫌がらなくなるいちばんの近道だと思っています。道具は、その手伝いをしてくれます。
最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員と一緒に進めていただけると安心です。
よくある質問
どれくらいの値段のものを選べばいいですか?
高いほど介護に向いている、というものではありません。ただ、わたしが自宅で使った5,000円くらいのものは、お湯の量が足りませんでした。介助に使うなら、お湯がしっかり出るか、手元で止められるかで選ぶと外れにくいです。売り場で持てるようなら、重さも確かめてみてください。
お風呂を嫌がる親も、入ってくれるようになりますか?
「寒い」「時間が長い」が理由になっている場合は、お湯がしっかり出るものに替えるだけで変わることがあります。立ち座りがつらい、疲れてしまう、が理由の場合は、いすや手すりを組み合わせると効きます。理由に合わせて選べば、改善することがあります。
マイクロバブル・ウルトラファインバブルって、どうなんですか?
メーカーが説明している「毛穴に届く」「保湿感」は、使った方の感想がもとになっているもので、医療機関が治療として勧めているものではありません。ただ、ゴシゴシこすらずに洗えるという点は、皮膚が薄くなりやすい高齢の方に合っています。
取り付けは自分でできますか?
多くのシャワーヘッドは、いま付いているものを手で回して外し、新しいものを回して付けるだけです。工具も工事も要りません。
ただし、メーカーによってつなぎ目の形が違うことがあります。商品の説明に「アダプター付き」と書かれているか、自宅の水栓のメーカー名を控えてから選ぶと確実です。水栓のメーカー名は、蛇口の根元やレバーの横に小さく刻まれていることが多いです。
家族もいっしょに使って大丈夫ですか?
大丈夫です。家族用と分ける必要はありません。
むしろ、先に家族が使って「気持ちいいよ」と言うほうが、親御さんも試しやすくなります。新しいものに替わると身構える方もいるので、いつもどおりの雰囲気で、さりげなく使ってもらうのがおすすめです。
もう自分では入れなくなってきました
浴槽をまたぐのが難しくなってきたら、体を洗ってもらう方法も選べます。寝たきりでもお風呂に入れる。「訪問入浴」という選択肢もご覧ください。
条件に合うものの一例
記事で挙げた「手元で止められる」「水流を切り替えられる」を、両方満たすものの一例です。
ReFa FINE BUBBLE U+(リファ ファインバブル ユープラス)
- 本体の背面に止水ボタン。介助の途中で、蛇口まで戻らずに止められます
- 4つのモードを切り替えられるので、頭と体で使い分けられます
- 重さは約320g。細かい泡を作る機構が入っている分、しっかりした重さです
売り場で持てるようなら、一度持ってから決めてください。ご自宅の水栓に対応しているかも、購入前に確認をおすすめします。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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