急な親の退院。退院前カンファレンスと退院後の準備の仕方
「まだ歩けないのに、来週退院ですと言われた。追い出されるみたいで」
「『ご家族も参加してください』と言われたけれど、何を話す場なんだろう」
退院が決まると、家に帰るまでの日にちが急に短く感じます。何を準備すればいいのか、誰に聞けばいいのかも分からないまま、日にちだけが過ぎていきます。
今日は、退院前カンファレンスがどんな場なのか、そこで家族が何を伝えればいいのか、そして家に帰るまでに準備しておくことを整理します。
退院前カンファレンスって何?
退院前カンファレンスは、家に帰ってからの暮らしについて、病院の人、担当ケアマネジャー、ご家族など関わる人が集まって話し合う場です。退院の1週間から2週間ほど前に、病院の会議室か、ご本人の病室で開かれます。時間は30分から1時間ほどです。
カンファレンスが開かれるのは、退院したその日から、必要なものがそろっている状態にしておくためです。帰ってから手すりやベッド、ヘルパーなど必要なサービスの手配を始めていては、そろうまでのあいだ、家族だけで支えることになります。
誰が集まるのか
病院からは、主治医、病棟の看護師さん、理学療法士、医療ソーシャルワーカー(病院の相談員)が出席します。
病院以外からは、ケアマネジャーや福祉用具の相談員など、在宅生活を支えてくれる人たちが参加します。
そして、ご家族、体調が良ければご本人も加わります。
病院での入院生活から、在宅での生活にスムーズにバトンタッチできるよう、関わるたくさんの人が集まります。
どんな話をするのか
はじめに、病院から今の状態の報告があります。どんな病気で、いまどこまでできるようになっていて、リハビリがどこまで進んだか。家で続ける処置や薬があれば、その説明も入ります。
次に、ご家族の側の話になります。家に誰がいるのか、日中は仕事なのか、どこまでできてどこからが難しいのか。ご家族やご本人の不安や希望もここでお話して大丈夫です。
最後に、家での暮らしをどう組むかという話に移ります。訪問看護を入れるのか、ヘルパーさんに来てもらうのか、デイサービスに通うのか。介護ベッドや手すりが要るかどうかも、ここで話し合います。
できるだけ、ご本人、ご家族にわかり易い言葉を使うようには心がけてはいますが、聞いたことのない言葉が出てくることもあります。そのときは、遠慮せずに「それはどういう意味ですか」と聞いてください。分からないまま話が進むほうが、あとで困ります。
家族が言っていいこと
この場でいちばん大事なのは、できないことを、できないと言っておくことです。
夜中の介助は無理です。平日の昼間は仕事で誰もいません。お金はあまりかけられません。そういうことを先に伝えておくと、それを前提にした組み方をしてもらえます。逆に、言わないまま決まったものは、たいてい家に帰ってから続かなくなります。
その場で言えなかったことを、あとで伝え直しても遅くはありません。決まったことは変えられますし、それを整えるのがケアマネジャーの仕事です。
退院までに家で準備しておくこと
よく出てくるのが、手すりと介護ベッドの話です。
玄関の段差や廊下、トイレに手すりが要る、という話になったとき、壁に取り付ける工事のことが頭に浮かぶと思います。ただ、その工事は、退院の日までにはまず間に合いません。介護保険を使う住宅改修は、事前に申請して、見積もりを出して、許可が下りてから工事に入るので、どうしても時間がかかります。
そこで、工事が終わるまでのあいだは、レンタルの手すりを使うこともできます。床に置くタイプのものや、床と天井で突っ張るタイプのものがあり、工事をしなくてもその日から使えます。レンタルは数日前にお願いしても間に合いますので安心してください。
介護ベッドをお願いするときには、置くスペースのことも考えておかなければなりません。ベッドのサイズは190センチ×90センチ程度です。コンセントの位置も確認してください。
「あんな大きなものが、うちに入るんでしょうか」と心配される方がいます。搬入は、部品に分けた状態で運び込んで、部屋の中で組み立てます。だから、ベッドがそのまま通るような広い入口は要りません。必要なのは、置く場所のほうです。
家具を少し寄せる、使っていない物を別の部屋に移す。そのくらいの準備で足ります。置く場所は、福祉用具の担当者と相談して決められます。
福祉用具のことは、こちらの記事にまとめています。
福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子まで
帰ってきてからの流れ
退院してすぐに、ケアマネジャーやサービスの担当者が自宅に来て、ご本人のお身体の様子や生活環境、サービス利用についての留意点などを確認し合います。これは一つの例ですが、ご本人がスムーズに歩けている場合や入院前からすでにサービスが動いていた場合には、この打ち合わせは省かれることがあります。
病院でいろいろと打ち合わせてから在宅生活がスタートしますが、実は、帰ってきてからわかることも多いです。思ったより歩けない、トイレが間に合わない。入院中は想定していなかったことが、起こることもあります。
一度決まったことはずっと続くわけではなく、状況に応じてサービスを修正することができます。回数を増やす、別のサービスを足す、道具を替える。気づいたことをケアマネジャーに伝えれば、いつでも変更することができます。
参加できないとき
仕事の都合や、遠くに住んでいて行けないこともあります。その場合は、電話をつないで参加できる病院もあります。難しければ、ほかのご家族に出てもらう、終わったあとにケアマネジャーから中身を聞く、という形でも構いません。
大事なのは、その場にいることではなく、ご家族の希望がその場に届いていること、そして決まった中身がご家族に伝わることです。出られないと分かった時点で、病院の相談員か担当のケアマネジャーにそう伝えて、家でできること、できないこと、聞きたいことを、先に話しておいてください。
まとめ
退院が決まってからの数日は、慣れない話が次々と続きます。家でできないこと、こうしてほしいという希望、分からなかった言葉は、その場で口に出して大丈夫です。
ひとりで抱えずに、担当のケアマネジャーに頼ってください。
この記事の話を、1枚の絵にしました。印刷して手元に置いたり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。
よくある質問
退院前カンファレンスは、必ずあるものですか?
必ずではありません。家に帰ってからの調整が要ると病院が判断したときに開かれます。短い入院で、家での暮らしがこれまでと変わらないようなら、開かれないまま退院になることもあります。開かれなくても、担当のケアマネジャーは病院と連絡を取っています。心配なことがあれば、そちらに伝えてください。
何を持っていけばいいですか?
介護保険証と負担割合証、それにお薬手帳があると話が早いです。あとは、聞きたいことを紙に書いていってください。その場では緊張して忘れます。家の間取りが分かるものがあると、手すりやベッドの話をするときに役に立ちます。
本人も出るのですか?
体調がよければ同席します。ご本人の前では言いにくいことがあるときは、先に病院の相談員かケアマネジャーに伝えておいてください。別の場を作ってもらえることもあります。
最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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