在宅介護

高齢の親に救急車を呼ぶタイミング。迷ったときに相談できる窓口があります

高齢の親に救急車を呼ぶタイミング。迷ったときに相談できる窓口があります

「夜中に見に行ったら、なんだかぼんやりしている。熱はない。でも、いつもと違う気がする」

「呼んで何ともなかったら、迷惑をかけてしまう気がして」

こう思ったことのあるご家族は、たくさんいます。

高齢の方は、若い人のようにはっきりした症状が出ないことがあります。ご家族から見ると「いつもと違う」くらいしか手がかりがない。だから迷います。

今日は、迷わず119番していい場面と、それに当てはまらなくて迷ったときに相談できる窓口について、一緒に整理していきましょう。

とも
とも
こんにちは。今日は、救急車を呼ぶかどうか迷ったときの話をしますね。
こまり
こまり
救急車って、たいへんなときに呼ぶものでしょ? まようことなんて、あるの?
とも
とも
それが、いちばん多いのが「これで呼んでいいのかな」という迷いなんです。わたしもご家族から、よくそう相談されます。
こまり
こまり
えっ、そうなんだ。どうしてまようの?
とも
とも
「タクシー代わりに使ってはいけない」という話を、みなさんよくご存じだからです。それで、遠慮してしまうんですね。今日は、その遠慮をほどくところから始めます。

高齢の親は、そもそも判断が難しい

まず、最初にお伝えしたいことがあります。

判断が難しいのは、ご家族の見方が足りないからではありません。 高齢の方は、体の変化が症状として表に出にくいことがあるからです。

総務省消防庁が出している「救急車利用リーフレット(高齢者版)」にも、こう書かれています。

高齢者は自覚症状が出にくい場合もありますので注意しましょう

若い人なら高い熱が出たり、はっきり「ここが痛い」と言えたりします。ところが高齢になると、熱が出ないまま具合が悪くなっていたり、痛みを訴えないままだったりすることがあります。

そうすると、ご家族の手元に残る手がかりは「いつもと違う」だけになります。

  • いつもより反応がにぶい
  • 食べる量が急に減った
  • 座り方、歩き方がなんとなくおかしい
  • 言っていることが噛み合わない

こんなふうに、言葉にしにくいものばかりです。だから迷う。迷うのが当たり前の状況だというところから、話を始めさせてください。


この症状なら、迷わず119番

まず、はっきりしている線からお伝えします。

次の症状は、消防庁が「ためらわずに救急車を呼んでほしい」として挙げているものです(高齢者版のリーフレットから、そのまま引用します)。

  • 顔半分が動きにくい、しびれる
  • 笑うと口や顔の片方がゆがむ
  • ろれつがまわりにくい
  • 見える範囲が狭くなる
  • 周りが二重に見える

手足

  • 突然のしびれ
  • 突然、片方の腕や足に力が入らない

意識

  • 意識がない(返事がない)、またはおかしい(もうろうとしている)

  • 突然の激しい頭痛
  • 突然の高熱
  • 急にふらつき、立っていられない

胸や背中

  • 突然の激痛
  • 急な息切れ、呼吸困難
  • 旅行などの後に痛み出した
  • 痛む場所が移動する

おなか

  • 突然の激しい腹痛
  • 血を吐く

そのほか

  • けいれんが止まらない
  • 冷や汗を伴うような強い吐き気
  • 物をのどにつまらせた
  • 交通事故や転落、転倒で強い衝撃を受けた
  • 大量の出血を伴うけが
  • 広範囲のやけど

このどれかに当てはまるときは、迷わず119番で大丈夫です。判断が正しかったかどうかを、ご家族が心配する必要はありません。

出典:救急車利用リーフレット(高齢者版)|総務省消防庁

こまり
こまり
なるほど。これにあてはまったら、まよわなくていいんだね。
とも
とも
そうです。ただ、ご家族が本当に困るのは、ここからなんです。

それでも迷うのは、どれにも当てはまらないから

実際に夜中、ご家族が迷うのは、上のどれにも当てはまらないときです。

「ぼんやりしている気がする」「なんとなく元気がない」「食べなかった」。書き出してみると、どれも決め手に欠けます。それで「朝まで様子を見るしかないか」となってしまう。

ところが、先ほどのリーフレットには、症状を並べたあとに、もうひとつ項目があります。

その他、いつもと違う場合、様子がおかしい場合

「いつもと違う」は、公式に挙げられている項目です。 家族の感覚が根拠として弱いから並べてあるのではなく、高齢の方の場合はそれが大事な手がかりになるから書かれています。

「タクシー代わりにするな」という言い方が広まっているので、遠慮してしまう方は本当に多いです。ただ、その遠慮のせいで、呼ぶべきときに呼べなくなってしまうのは、避けたいところです。


迷ったときに相談できる窓口

自宅のテーブルで、電話をかけて相談している家族

とはいえ「いつもと違うから、とりあえず119番」と言われても、なかなか受話器は取れないと思います。

その手前に、相談できる窓口があります。

#7119(救急安心センター事業)

電話をかけると、医師・看護師・救急救命士が話を聞いて、緊急性についてアドバイスをくれます。すぐ救急車を呼んだほうがいいのか、朝の受診で間に合うのかを、一緒に考えてもらえます。

ただし、まだ全国どこでも使えるわけではありません。 実施している地域も、受付時間(24時間のところ、夜間だけのところ)もさまざまです。

だからこそ、お元気なうちに、お住まいの市区町村で使えるかどうかを調べておいてください。 夜中に慌ててから調べるのは、まず無理です。分かったら、電話のそばに書いて貼っておくと確実です。

Q助(きゅーすけ)

消防庁が出している「全国版救急受診アプリ」です。当てはまる症状を画面で選んでいくと、緊急度に応じた対応が表示されます。スマートフォンのアプリのほか、パソコンやスマホのブラウザから使えるWeb版もあります。

こちらは全国どこからでも使えるので、#7119が無い地域の方は、これを入れておくと安心です。

Q助はこちら:全国版救急受診アプリ(愛称「Q助」)|総務省消防庁

訪問看護が入っているなら、夜間も相談できます

すでに訪問看護を利用している方は、24時間つながる相談先を、もう持っています。

体調や血圧の数字を見て迷うようなときは、その時間帯の担当者に電話がつながる仕組みがあります。わたしがご家族によくお勧めしているのも、実はここです。医療の目で見てもらえる相手が夜中にいるというのは、それだけで違います。

訪問看護そのものについては、こちらの記事にまとめています。

訪問看護って何をする人?訪問介護とのちがいと、頼むタイミング

かかりつけ医

先ほどのリーフレットにも「迷ったら『かかりつけ医』に相談しましょう」と書かれています。日中であれば、まずここです。


「救急車か、朝まで我慢か」の二択ではありません

もうひとつ、知っておいていただきたい道があります。

救急外来です。

「救急車を呼ぶほどじゃない。でも朝までは不安」というとき、車で連れて行ける状態なら、時間外でも診てくれる病院はわりとあります。ご本人が歩ける、車に乗せられる、という状況なら、この道が使えます。

大事なのは、近所のどの病院が時間外に対応しているかを、先に知っておくことです。これを知っているかどうかで、いざというときの動きがまるで変わります。ケアマネジャーとして、ここは本当にお勧めしたいところです。

実は、わたし自身がこれに助けられたことがあります。

ある夜、父が家の中で転んで、額のあたりを切ってしまいました。血をかたまりにくくする薬を飲んでいたので、出血がなかなか止まりません。そばにいた母は、すっかり動転していました。

わたしは以前ショートステイで働いていたころの経験があったので、救急外来のある病院にすぐ電話をかけました。おかげで、その場で診てもらうことができました。

知っているかどうかで、ここまで違うのかと思いました。慌てずに動けるというのは、それだけで大きいです。

もちろん、無理は禁物です。ご本人が立てない、意識がはっきりしない、という状態なら、抱えて車に乗せようとせず119番にしてください。


本人が「呼ばないで」と言うとき

ここは、あまり知られていない話です。

救急隊は、ご本人の同意がないと搬送できません。

家族が救急車を呼んで、救急隊が到着して、それでもご本人が「行かない」と拒んだために運べなかった——わたしも一度だけ、そういう場面を経験しています。

「呼べば連れて行ってもらえる」と思っている方がほとんどだと思います。でも、そうとは限りません。

だからこそ、元気なうちに話しておくことが効いてきます。もしものときに救急車を呼んでいいのか、病院で何をしてほしいのか。改まって話すのは気が重いテーマですが、一度でも触れておけると、その夜の景色が変わります。

話し方については、こちらの記事にまとめています。

人生会議(ACP)とは?何を話す?家族でのやさしい始め方


呼ぶと決めたら、玄関にまとめておくもの

お薬手帳を母娘で一緒に確認しているところ

救急車を呼ぶと決めたら、次は持ち物です。慌てている最中に探し回るのは大変なので、ふだんから一つの袋にまとめて、すぐ手に取れる場所に置いておくことをお勧めします。

  • 健康保険証(マイナ保険証を使っている方はマイナンバーカード)
  • お薬手帳(今飲んでいる薬が分かるもの)
  • 介護保険証
  • かかりつけ医の名前と連絡先
  • ふだんの様子を書いたメモ(持病、これまでの手術、ふだんの血圧など)

とくに役に立つのは、お薬手帳です。何をどれだけ飲んでいるかは、病院で必ず聞かれます。

あとは、いつから、どんなふうに、いつもと違うのかを伝えられるようにしておくと、その後がスムーズです。「夕方から呼びかけへの反応がにぶい」というくらいで構いません。

そろわなくても大丈夫です

ひとつ、先にお伝えしておきたいことがあります。

119番に電話をすると、救急車が着いたら外に出て誘導してほしいと頼まれることがあります。道が入り組んでいる場所や、集合住宅ではとくにそうです。

ご家族が一人で対応していると、電話をして、玄関の鍵を開けて、外に出て救急車を待って、持ち物もそろえて……と、やることが一度に重なります。その状況で全部そろえるのは、まず無理です。

そろわなくて構いません。 保険証やお薬手帳は、後から病院へ届けても、翌日になっても大丈夫です。

大事なのは、ご本人のそばにいることと、救急隊が迷わずたどり着けることの2つです。持ち物は、その次で構いません。


呼んだあと、どうなるのか

ここも、先に知っておくと気持ちがずいぶん楽になります。

受け入れ先の病院を探すのは、救急隊です。 ご家族が電話をかけて回る必要はありません。到着した救急隊が状態を見て、そこから搬送先を探してくれます。

そして、もうひとつ。

空振りで構いません。

救急車を呼んだあとに発作がおさまって、ご本人が自分で歩いて救急車に乗り込む——そういうことも、実際にあります。呼んだ時点では誰にも分からないのですから、それでいいんです。

むしろ心配なのは、「何ともなかったら申し訳ない」と我慢しているあいだに、状態が悪くなってしまうことのほうです。


入院になったら、ケアマネジャーに一報を

最後に、ケアマネジャーの立場からひとつお願いをさせてください。

呼ぶかどうかで迷っている段階では、ケアマネジャーに連絡しなくて構いません。 そこは医療の判断になるので、#7119や訪問看護、かかりつけ医のほうが確実です。

ただ、そのまま入院になった場合は、ぜひ一報をください。

連絡をいただけると、そのあとわたしたちが病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)と連絡を取り合えます。入院中の様子を聞き、退院がいつごろになりそうかを早い段階でつかんでおけると、帰ってきてからの支度が間に合います。 ベッドの手配も、サービスの組み直しも、退院の話が出てから慌てて始めると、どうしても遅れます。

ご家族にとっては、入院の連絡を1本入れておくだけです。それだけで、退院のときの負担がずいぶん軽くなります。


まとめ

こまり
こまり
つまり、こういうこと? 顔がゆがむとか、意識がおかしいとか、はっきりしたのが出てたら、まよわず119番。それにあてはまらなくて「いつもとちがう」だけのときは、#7119やQ助、それから訪問看護のひとに相談していい。くるまで行けそうなら救急外来もある。呼んだあとは、病院さがしは救急隊がやってくれるし、から振りでも大丈夫。こんな感じ?
とも
とも
そのとおりです。いちばん覚えて帰ってほしいのは、呼ぶかどうかを、ご家族だけで決めなくていいということですね。

迷うのは、判断材料が少ないからです。ご家族の見方が足りないわけではありません。

だから、その迷いを持っていける先を、先に作っておいてください。 お住まいの地域で#7119が使えるか調べる。Q助を入れておく。近所の病院の時間外を確認しておく。どれも、今日のうちにできることばかりです。

その一手間が、次に「いつもと違う」と感じた夜、ご家族を助けてくれます。

ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して電話のそばに貼ったり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。

救急車を呼ぶか迷ったとき/呼ぶかどうかを家族だけで決めなくて大丈夫です/1 この症状なら迷わず119番(顔がゆがむ・ろれつが回らない、意識がもうろうとしている、片方の手足に力が入らない)/2 当てはまらないなら相談する(#7119は使える地域か先に確認、Q助は全国どこでもアプリとウェブ、訪問看護が入っていれば24時間)/3 通えるなら救急外来(時間外でも診てくれる病院は多い、近所の病院を先に調べておく、立てないときは無理をせず119番)/呼ぶと決めたら=保険証・お薬手帳・介護保険証、かかりつけ医の名前と連絡先、そろわなくても大丈夫/呼んだあと=病院を探すのは救急隊、歩いて乗り込むこともある、空振りで構いません/本人が嫌がったら=同意がないと運べないことがある、元気なうちに話しておく/入院になったら=ケアマネジャーに一報を、病院の相談員と連携します

この図を保存する(印刷用)

最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。


よくある質問

とも
とも
最後に、よくいただく質問にいくつかお答えいたします。

呼んで何ともなかったら、怒られませんか?

怒られません。救急車を呼んだあとに症状がおさまって、ご本人が歩いて乗り込むこともあります。

その時点で緊急かどうかは、誰にも分かりません。判断できないから呼ぶのであって、結果として何もなかったなら、それが何よりです。

救急車を呼ぶのに、お金はかかりますか?

救急車を呼ぶこと自体は無料です。 呼ぶときに保険証も要りません。救急の仕事は市町村が行うものと決められていて、費用は税金でまかなわれているからです。

ただし、運ばれた先の病院で診察や治療を受けた分は、ふだんの通院と同じように医療費がかかります。 そのときに保険証(マイナ保険証)が必要になるので、落ち着いてから持っていけば大丈夫です。

なお、そのまま入院になった場合、病院によっては預り金(入院時の保証金)を求められることがあります。夜間や休日で会計の窓口が開いていないために、いったん預り金という形で預ける、ということもあります。

慌ててその場で用意する必要はありませんが、落ち着いてから保険証を届けるときに、財布も一緒に持っていくと安心です。

かかりつけの病院に運んでもらえますか?

運ばれる先を決めるのは、救急隊です。 ご本人の状態、緊急度、その場所からの距離、かかりつけかどうか——そういったことを見て、そのときの状態に合った病院を選びます。

かかりつけの病院に運ばれることもありますが、必ずそうなるとは限りません。 ただ、かかりつけがあることは救急隊にとって大事な情報なので、病院の名前は必ず伝えてください。

家族は救急車に一緒に乗れますか?

はい、乗れます。むしろ、同乗をお願いされることが多いです。 病院に着いてから、治療についてご家族の判断や同意が必要になることがあるからです。

どうしても付き添えないときは、搬送先が決まってから、自分の車で追いかける形でも構いません。慌てて運転して事故を起こしては元も子もないので、そこは無理をなさらないでください。

🐾
とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

この人について →

こちらもどうぞ