親の耳が遠くなってきた。家族のストレスと上手な伝え方
「最近、親に何度も同じことを繰り返しているな」 「つい大きな声を出してしまって、あとで自己嫌悪に…」
そんな経験、ありませんか。
耳が遠くなった家族との会話は、じわじわと疲弊します。 悪意なく聞こえていないのはわかっていても、毎日のことだと積み重なる。
今日は、耳が遠い方とのコミュニケーションのコツと、介護する家族のストレスをちょっとでも軽くするヒントをお話しします。
なぜ「大きな声」だけでは伝わらないの?
高齢になると多くみられるのが加齢性難聴です。 年をとると、高い音(高周波数)から聞こえにくくなります。
ここが大事なポイントで、加齢性難聴の方は「音の大きさ」よりも「聞き分けにくさ」に困っていることが多いのです。
つまり、大きな声で話しかけても、「音はするけど何を言っているかわからない」という状態になりやすい。 そのうえ、大きな声で話しかけると逆に「うるさく感じる」と不快になることも。
会話がラクになる、すぐ使えるコツ
難しい道具は必要ありません。まず試せることをまとめます。
話す「前」の準備
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正面から、顔を見て話す 横から話しかけると気づかれないことがよくあります。まず視線を合わせてから話し始めましょう。
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静かな場所で話す テレビや換気扇の音があると、背景ノイズで声が聞き取りにくくなります。大事な話は音を少し減らしてから。
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「話しかけますよ」の合図を作る 肩をそっと触れる、名前を呼ぶなど、「これから話す」という合図があると相手も集中しやすくなります。
話す「中身」の工夫
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一度に一つのことだけ言う 「お薬飲んで、トイレも行ってね、あとご飯も…」と続けると途中で追いつかなくなります。一文一内容で区切る。
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短く、ゆっくり、はっきりと 早口は特に聞き取りにくい。焦らずゆったり話す。
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聞こえなかったとき、同じ言葉を繰り返すだけでなく言い換える 「薬」→「くすり・白い小さいの」のように別の言葉に置き換えると伝わることがあります。
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書いて渡す・メモを活用する 「あとでわかるように」という意味でも、メモや小さなホワイトボードは便利です。いまでは、電子メモのような商品も見かけるようになりました。
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身ぶりを添える 声だけで伝えようとせず、手の動きを一緒に添えます。「ごはん」なら食べる仕草を、「お風呂」なら体を洗う仕草を。わたしが現場でよく使っているのが、この身ぶりと、書いて見せる方法です。ゆっくり・はっきり・少し低めの声に、この二つを足すだけで、伝わり方が変わることがあります。
補聴器のこと、少しだけ整理しておきます
「補聴器をすすめたいけど、親が嫌がる」という悩みも多いです。
補聴器は、つけてすぐ自然に聞こえるとは限らず、音に慣れたり調整したりするのに時間がかかることがあります。一方で、「高い」「うるさく感じる」「目立つのが嫌」など、抵抗感を持つ方も少なくありません。
補聴器の種類と選び方のポイント
補聴器には大きく分けて耳かけ型・耳あな型・ポケット型などがあります。
- 耳かけ型:操作しやすく、比較的安価なものもある。メガネをかける方はひっかかりやすいことも
- 耳あな型:目立ちにくい。オーダーメイドが多く費用は高め
- ポケット型:操作が簡単で、指先が不自由な方にも使いやすい
補聴器は医療機器なので、購入前に耳鼻科を受診して聴力検査を受けることをおすすめします。 「補聴器相談医」という認定を受けた耳鼻科の先生もいるので、かかりつけに相談してみてください。
また、市区町村によっては補聴器購入に対する助成制度がある場合があります。 費用が心配な場合は、地域包括支援センター(地域の介護の相談窓口のこと)や市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。
「つければ解決」とも、「どうせ使わない」とも言えません
ここは、わたしが現場で見てきたことをそのままお伝えします。
補聴器は、買えば必ず使えるようになる、というものではありません。つけてみたけれど違和感があって、途中でやめてしまった方を、わたしは何人も見てきました。合わない入れ歯を、だんだん使わなくなってしまうのと、少し似ています。
その一方で、オーダーメイドの補聴器がうまく合って、普通に会話ができるようになった方もいます。
どちらも、実際にあることです。ですので、使い続けられないことにも、ご本人なりの理由があるかもしれません。逆に「どうせ使わなくなる」と決めてしまうのも早いと、わたしは思っています。まずは耳鼻科で聞こえの状態をみてもらうところからです。
家族のストレスを、どう扱うか
何度も聞き返される、話が通じない、そのたびにイライラしてしまう。 そして夜に「また怒ってしまった」と落ち込む。
このサイクル、本当に疲弊しますよね。
大切なことを言わせてください。
イライラすることは、悪いことではありません。 あなたが怒りやすい性格なのでも、冷たい人間なのでもない。それだけ毎日向き合っているということです。
正直に書きます。わたしは仕事として、耳が遠い方への伝え方を知っています。それでも、自分の父となると話は別です。何度も聞き返されたり、関係のない話に「なんて言ったの」と入ってこられたりすると、やはりいらっとします。知っていることと、家族としてできることは、別なのだと思います。
聞こえていない側にも、思いがあります
そんなやり取りをしている中で、父にこう言われたことがあります。
「自分だけのけものにして」
わたしが担当しているご本人から、「自分の悪口を言っているんだろう」と言われたこともあります。
聞こえないというのは、話の中身が分からないことだけではないのだと思います。その場の会話から、自分だけ取り残されたように感じることでもある。そう考えると、聞き返されたときの受け取り方も、少し変わってくるかもしれません。
具体的なストレス対処として、こんなことを試してみてください。
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「うまく伝わらなかった」を記録してみる どんな状況、どんな話題のとき特に難しいかを書き出すと、対策が立てやすくなります。
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一人で抱えない 他の家族、ヘルパーさん、ケアマネジャーに「伝わらなくて困っている」と話すだけで、気持ちが軽くなることがあります。
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会話の全部をうまくやろうとしない すべての会話を完璧に伝える必要はありません。「今日は伝わった」「今日は難しかった」くらいのゆるいスタンスで。
まとめ
イライラするのは、仕方のないことです。長く介護の仕事をしているわたしでも、家族になれば感情のほうが先に来ます。ですので、頑張りすぎなくて大丈夫です。普段どおりでいいんです。そのうえで、少しだけ気持ちの向きを変えてみると、関わり方も少し変わるかもしれません。
ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して手元に置いたり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。
補聴器の選び方や、地域の助成制度については、担当のケアマネジャーや耳鼻科の先生、地域包括支援センターにご相談ください。 個々の状況によって合う方法は違いますので、最終的なご判断はぜひ専門家といっしょに。
よくある質問
集音器と補聴器は、何が違うのですか?
補聴器は、難聴の方の聞こえを補うための医療機器で、その人の聞こえに合わせて調整して使います。 集音器は医療機器ではなく、周囲の音を大きくして聞くための機器です。比較的安く手に入るものもありますが、目的も仕組みも違います。
耳鼻科に行くのを嫌がります。
「補聴器を買いに行こう」ではなく、「耳が詰まっていないか見てもらおう」と誘ってみてください。 耳あかが詰まって、聞こえにくくなっていることもあります。
話が通じないのは、認知症のせいでしょうか?
聞こえていないために、返事がずれてしまうことがあります。 聞こえの問題なのか、ほかに原因があるのかは、これだけでは分かりません。まず耳鼻科で、聞こえの状態を確認してもらいましょう。
補聴器を買ったのに、つけてくれません。
補聴器は、つければすぐ快適に聞こえるとは限りません。音がうるさく感じたり、耳につけること自体に違和感があったりして、使わなくなる方もいます。 「せっかく買ったのに」と責めるより、買ったお店や耳鼻科に相談して、調整してもらう方法があります。
テレビの音が、どんどん大きくなっています。難聴でしょうか?
難聴のサインのひとつではありますが、音量だけでは分かりません。 聞き返しが増えた、後ろから呼んでも気づかない、といったことも重なっているようなら、一度耳鼻科で聞こえを確認してもらうと安心です。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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