親の爪切り・ひげそり・耳のケア。家族が安全にできるコツと、頼れる人
「爪が伸びてるのは気になるけど、固くて力もいるし、怪我させたら怖くて…」
「ひげや耳の中、どうやって手入れすればいいんだろう」
そんなふうに手が止まってしまう方、けっこういらっしゃいます。
身だしなみのケアは、食事や排せつに比べて後回しになりがちですが、 やってあげると本人もすっきりして気持ちが上向くことが多いんです。 今日は、家族が安全にできるコツと、「ここは頼んでいい」という話を一緒に整理していきます。
身だしなみが整うと、本人の気持ちが変わる
介護では「食べる」「清潔を保つ」「排せつ」が優先されがちです。 そのなかで爪や髭、耳のお手入れは「後でいいか」となりやすい。
でも、身だしなみが整うことは、本人の自己感覚(自分がちゃんとしているという感覚)にじかにつながっています。 「鏡を見てすっきりした」「清潔になってよかった」という小さな積み重ねが、 生活意欲や気分にもじんわり影響することがあります。
「全部やらなければ」ではなく、「できる範囲で、安全に」。 それだけでじゅうぶんです。
爪切り、安全にやるための4つのポイント
① お風呂上がり・足湯のあとが狙い目
高齢になると爪が乾燥して、分厚く固くなりやすいです。 そのまま切ろうとすると力が要るし、割れやすい。
一番のコツは、お風呂上がりや足湯のあとに切ること。 爪が水分を含んで柔らかくなっているので、切りやすくなります。 足湯はタライ(たらい)にお湯を張るだけでできるので、習慣にしやすいですよ。
② 一気に切らず、少しずつ
「一気に切ろう」とするのが深爪の原因になりがちです。 端から少しずつ、小さくカットを繰り返すほうが安全。
爪切りは、高齢者用のニッパー型(ペンチのような形)が力をかけやすく、 コントロールもしやすいので使いやすいです。 一般的なパチンと挟む形の爪切りより、ずっと扱いやすい方が多いです。
ただし、爪がかなり厚くなっている、変形している、色が変わっているという場合は、 道具を変えて家族が無理に切るのではなく、皮膚科などに相談してください。
③ 深爪・切り過ぎに注意
皮膚ギリギリまで切り込まないこと。 深く切り込まず、白い部分を少し残すくらいが目安です。
手の指はまだ見やすいですが、足の指は見えにくい上に 皮膚が重なって隠れていることも。無理に覗き込まず、触りながら確認しながら切るくらいのペースで。
④ 仕上げはやすりで整える
切り終わったら、爪やすりで切り口のざらつきを整えておくと、 引っかかりがなくなって本人も楽になります。
このとき、爪の両端の角は落とさないでください。 角まで切り落とすと、伸びてきた爪が皮膚に食い込んで、巻き爪や陥入爪(かんにゅうそう)のもとになります。 先はまっすぐ、角は指先から少し出るくらいに残す。これが足の爪の基本です。
ひげ・耳・鼻のケア、気をつけたいこと
ひげそり
男性の方のひげそりは、電動シェーバーのほうが家族には扱いやすいです。 刃物(T字カミソリ)は肌に当たる角度が難しく、引っかかって出血しやすい。 電動ならゆっくりなぞるだけでよいので、家族がやりやすいですし、本人が自分でできることも多いです。
使い方はシェーバーの説明書を確認してください。肌がひりつくようなら、無理に続けないことです。
耳のケア
耳そうじは「やりすぎない」がポイントです。 耳垢は本来、自然に外へ出てくるしくみがあります。
家族がやる場合は、耳の入口をやわらかいガーゼなどで軽く拭く程度にとどめてください。 綿棒を奥まで入れると、逆に耳垢を押し込んだり、耳の壁を傷つけることがあります。
「耳が聞こえにくくなってきた」と感じるときは、耳垢が詰まっている(耳垢栓塞・じこうせんそく)ことがあります。 その場合は耳鼻科で取ってもらうのが安全です。
ちなみに、耳の聞こえに関する家族の悩みは 親の耳が遠くなってきた。家族のストレスと上手な伝え方 にまとめているので、よかったら読んでみてください。
鼻のケア
鼻毛が気になる場合は、鼻毛専用の電動カッターなど、皮膚を傷つけにくい道具を使うほうが安心です。 鼻の奥まで処理しようとしないでください。 粘膜が薄くなっているので、少し触れただけで出血しやすいです。
糖尿病などで足の管理が必要な方の爪は、自己判断で切らない
ここだけは特別に注意してほしいポイントです。
糖尿病(とうにょうびょう)のある方は、神経の障害で足の感覚が鈍くなったり、傷が治りにくくなったりすることがあります。 小さな傷に気づかないまま悪くなることがあるので、 医師や看護師から足のお手入れについて言われている方は、家族だけで判断せず、爪を切ってよい状態か聞いてみてください。 糖尿病があれば必ず切ってはいけない、ということではありません。専門的な管理が必要な状態かどうかで変わります。
巻き爪(爪の端が皮膚に食い込んでいる状態)の方は、爪と皮膚の境目が切りにくく、 家族が切ろうとすると皮膚のほうを傷つけてしまいがちです。
血をさらさらにする薬(抗凝固薬・こうぎょうこやく)を飲んでいる方は、 少し切りすぎただけでも、出血が止まりにくいことがあります。 心配なときは、無理に家族だけで判断せず、主治医や看護師に一度相談しておくと安心です。
爪が厚く変形している、爪の周りが赤く腫れている。そういう爪のケアは、 専門職(訪問看護師、皮膚科、フットケア外来など)に任せてください。
困ったら頼れる専門職
「やり方は分かったけど、それでもやっぱり怖い」という場合は、 そのまま誰かに任せるのでいいんです。
ヘルパー(訪問介護)
訪問介護では、状態に問題がなければ、爪切りやひげそり、耳のお手入れ(整容)をお願いできる場合があります。 「自分でやるのが不安」「本人が嫌がる」という場合は、ケアマネジャーに相談してサービスに組み込んでもらえます。
ただし、爪切りには条件があります。国の通知で、ヘルパーが切ってよいのは 「爪そのものに異常がなく、爪の周りの皮膚に化膿や炎症がなく、糖尿病などで専門的な管理が必要でない場合」と決められています。
つまり、爪が分厚く変形している、爪の周りが赤く腫れている、糖尿病などで足の管理が必要と言われている。 このどれかに当てはまるときは、ヘルパーさんの範囲を超えます。 耳も同じで、耳垢が固まって詰まっている状態(耳垢栓塞)は範囲外です。
でも、頼めるかどうかを家族が見分ける必要はありません。 ケアマネジャーに状態を伝えれば、ヘルパーか訪問看護かを整理してもらえます。
訪問看護
爪の状態が気になるときは、訪問看護を利用している方なら、看護師に見てもらったり、ケアを相談できることがあります。 医療の知識があるので、爪の状態を見ながら安全に対応してもらえます。
フットケア外来・皮膚科
爪が厚くなりすぎている、巻き爪がひどい、というケースは、病院で対応してもらうのが確実です。 「フットケア外来(フットケアがいらい)」という専門の外来を設けている病院や診療所もあります。 かかりつけ医や皮膚科に相談してみてください。
訪問理美容・介護美容
理容師・美容師が自宅に来てくれる訪問理美容のほか、最近は爪や肌のお手入れ、メイクまで含めて、高齢のかたの「きれいでいたい」という気持ちを支える介護美容という分野も広がっています。 介護保険のサービスではないので自費になりますが、爪をやすりで整えてもらう、手を温めてもらう。それだけのことが、本人にとっては楽しみになることがあります。
制度のうえで頼めることと、その事業所が受けてくれるかどうかは、別の話です。 条件を満たしていても、「うちでは爪切りはお受けしていません」という事業所はあります。
どこまでやってもらえるかは、事業所や病院によって違います。 「爪を切ってもらえますか」「どこまでお願いできますか」。利用する前に一度そう聞いておくと、あとで戸惑わずにすみます。
まとめ
身だしなみのケアは、毎日のことだからこそ、無理のないやり方で続けることが大切です。
「ちゃんとやってあげなきゃ」という気持ちはとても大事。 でも、「怖いな」「難しいな」と感じるところは、専門職の力を借りていい場面です。
ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して手元に置いたり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。
最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや訪問看護師など、専門職の方にご相談ください。
よくある質問
爪切りはヘルパーさんにお願いできますか?
はい、状態に問題がなければ、訪問介護でお願いできる場合があります。 ただし、爪そのものに異常がある(分厚い・変形している)、爪の周りが化膿や炎症を起こしている、糖尿病などで専門的な管理が必要、 このどれかに当てはまる場合はヘルパーの範囲外になります。 まずはケアマネジャーに「爪切りを誰かに頼みたい」と伝えてみてください。状態に合わせて、ヘルパーか訪問看護かを判断してもらえます。
爪が黒ずんでいたり、変な形になっています。自分で切っていいですか?
色が変わっている、形が大きく変形しているという場合は、皮膚科や内科に相談してからのほうが安心です。 爪の変色や変形は、糖尿病や水虫(白癬・はくせん)、栄養状態などが関係していることがあります。 見た目で判断せず、まず医師に診てもらってください。
耳そうじは毎日したほうがいいですか?
毎日する必要はありません。入浴後などに、耳の入口をやわらかいガーゼで軽く拭く程度で十分です。 奥まで触ると逆効果になることがあるので、無理に入れないのがポイントです。 「最近聞こえが悪くなってきた気がする」という場合は、耳垢が詰まっているかもしれないので、耳鼻科で診てもらいましょう。
本人がケアを嫌がります。どうすればいいですか?
無理にやろうとしないことが、まず大事です。 タイミングを変える(お風呂上がり、機嫌がよいとき)、声かけの仕方を工夫するだけで受け入れてもらいやすくなることがあります。 どうしても拒否が強い場合は、家族より専門職(ヘルパー、看護師)のほうがすんなりできることも少なくありません。ケアマネジャーに相談してみてください。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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