親がエアコンを嫌がる理由は?ケンカせず夏の室温を守る工夫
「寒い」と言ってエアコンのスイッチを消してしまう。 気づいたら部屋の温度計が30〜32度を指している。 そんなシーンに、ひやりとした経験のある家族の方は多いのではないでしょうか。
高齢になると「暑い」と感じにくくなり、家の中にいても熱中症になることがあります。実際、高齢者の熱中症は、住まいの中や夜間にも多く発生しています。だからこそ、親子ゲンカにならずに室温を守る工夫が大切になります。
「何度言っても分かってくれない」と疲れ果てる前に、 ちょっと立ち止まって考えてみましょう。 今日はケンカしないで室温を守る工夫を、一緒に整理していきますね。
なぜエアコンを嫌がるのか、まず理由を知る
体が暑さ・寒さを感じにくくなっている
高齢になると、暑さを感じる感覚が鈍くなるだけでなく、汗をかくなどの体温調節機能も低下します。 そのため、本人がそれほど暑いと感じていなくても、体の中に熱がこもってしまうことがあります。これが、夏に高齢のかたの熱中症が増える理由のひとつです。
「寒い」と感じているのは、本人にとって本当のことです。 嘘をついているわけでも、わがままなわけでもない、ということをまず押さえておいてください。
電気代が気になる・節約の意識
高度経済成長期を経験した世代は、「電気代は節約するもの」という感覚が強く根付いているかたが多いです。 「つけっぱなしは贅沢」「少しくらい我慢すればいい」という価値観は、何十年もかけて染み込んだもの。 家族が「つけておいて」と言っても、頭ではなく体がつい消してしまう、という感じです。
昔からエアコンのない生活をしてきた
そもそもエアコン自体に不慣れなかたや、「扇風機と窓で十分」という感覚が残っているかたもいます。 冷たい風が直接体に当たるのが苦手で、「エアコンをつけると体がだるくなる・冷えすぎる」という経験(いわゆる「冷房病」的な感覚)から、エアコンそのものを避けたくなるかたもいます。
角を立てない声かけと、設定の見せ方
温度計を目に見えるところに置く
「暑い」「寒い」の言い合いはどうしても平行線になりがちです。 そこで、デジタル温度計を部屋に置いて、数字で一緒に確認する、という方法があります。
「お母さん、今部屋は何度だと思う?」と聞いてみる。 「えっ、30度もあるの?」と本人が気づければ、そこから話が変わることがあります。 家族から「暑い」と言われるより、機械の数字を見た方が受け入れやすいかたは多いです。
「冷やす」ではなく「快適にする」言い方に変える
「暑いからエアコンをつけないと危ない」という伝え方は、相手を焦らせたり、むっとさせたりしやすいです。
代わりに、こんな言葉を試してみてください。
- 「湿気が多いから、ちょっとだけ除湿してみない?」
- 「まず28度くらいの設定で試してみようか。寒かったら一緒に調整しよう」
- 「わたし(家族)が来るまでつけておいてもらえると安心なんだけど」
「あなたのため」ではなく「わたしの安心のため」と伝えると、受け入れてもらいやすいことがあります。
設定温度を任せる、選ばせる
「消さないで」と禁止するより、「28度か29度、どっちがいい?」と選んでもらう方が、本人が主体的に関われます。 リモコンの操作も、自分でやった方が「自分が決めた」感覚が持てるので、消しにくくなることがあります。
エアコン以外の工夫も組み合わせる
エアコン一本槍では、どうしても「消す・つける」の攻防になりがちです。 エアコン以外の手段を組み合わせて、部屋全体の体感温度を下げる工夫も有効です。
カーテン・すだれで熱を入れない
昼間の直射日光を遮るだけで、室温はかなり変わります。 遮熱カーテンや、窓の外にすだれ・シェードをかけるのは、「電気を使わない工夫」として受け入れてもらいやすいです。
扇風機・サーキュレーターを使う
エアコンより馴染み深い「扇風機」なら、抵抗が少ないかたもいます。 扇風機やサーキュレーターでエアコンの冷気を部屋に循環させると、設定温度を少し上げても同じくらい涼しく感じられます。 また、エアコンの風が直接当たるのが苦手なかたは、風向きを天井や壁に向けるだけでも、ぐっと楽になります。冷えすぎる感じが減るので、「つけていてもいい」と思ってもらいやすくなります。
除湿モードを活用する
「冷房」は嫌がっても「除湿」なら受け入れるかた、意外といます。 「暑い」より「じめじめする」の方が、不快感として伝わりやすいこともあります。 湿度が下がることで、蒸し暑さが和らぐことがあります。ただし、除湿だけでは室温が十分に下がらないこともあるため、温湿度計を確認しながら冷房と使い分けましょう。
冷感グッズ・水分補給
冷感タオル、冷感ソックス、首に巻くひんやりグッズなども、局所的に涼しさを感じてもらうのに使えます。 水分補給についても、「喉が渇いた」と感じにくくなっているため、時間を決めて一緒に飲む習慣を作るのがおすすめです。たとえば「朝起きたら一杯」「食事のたびに一杯」「10時と15時に一杯」のように、タイミングを決めておくと続けやすくなります。環境省の資料では、食事以外に1日1.2リットルほどの水分をとるのが目安とされています。一度にたくさんは難しいので、少しずつこまめに、が続けるコツです。ただし、心臓や腎臓の病気などで水分量を制限されているかたは、自己判断で増やさず、主治医の指示に従ってください。
離れて暮らす場合は室温の「見守り」を
同居していない場合、エアコンをつけているかどうか、室温がどれくらいかを把握するのは難しいですよね。 そんなときは、スマートフォンと連携できる温湿度センサー、スマートリモコン、見守りカメラといった機器を活用する方法があります。
スマート家電対応のエアコンであれば、外出先から遠隔操作できる機種もあります。 「実家のエアコンを離れたところからつけてあげたい」というニーズに応えた製品が、ここ数年で増えてきました。
ただし、こうした機器の導入には本人の同意と、操作を覚えてもらうサポートが必要です。 機器を押しつけるのではなく、「一緒に試してみようか」という形で始めるのがスムーズです。
また、熱中症になりかけているときのサインや、すでに体調を崩している場合の対応については、高齢者の熱中症、気づいたときには手遅れ?家族が知っておきたいことにまとめていますので、こちらもあわせて読んでみてください。
まとめ
最終的な対応方針については、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。 ご家族の状況によって、最適な方法は変わってきます。
家族からよく聞かれる質問
何度くらいになったら、本当に危ないですか?
環境省は、暑い時期は室温が28度を超えないように冷房を使うことを目安として呼びかけています。気をつけたいのは、この「28度」はエアコンの設定温度ではなく、部屋の実際の温度(室温)だということ。設定を28度にしても、西日が入る部屋などでは室温はもっと高くなることがあるので、設定温度ではなく温度計の数字そのものを見てあげてください。 湿度が高いと体感はさらに上がるため、温度と湿度の両方が分かる温湿度計だと安心です。 もちろん危険かどうかは室温だけで決まるわけではありません。まずは室温28度前後をひとつの目安にし、温度だけでなく湿度や本人の体調も一緒に確認してみてください。
扇風機だけではだめですか?
扇風機は風を送って涼しく感じさせてくれますが、部屋の温度そのものを下げる力はありません。室温が高い日は、扇風機だけに頼らず、エアコンと併用するのが安心です。エアコンで室温を下げ、扇風機で風を回すと、少し高めの設定でも涼しく感じられます。
エアコンを嫌がる親に、どうしても使ってもらえません。どこかに相談できますか?
担当のケアマネジャーや、地域包括支援センターに相談してみてください。 訪問介護や訪問看護のスタッフから声をかけてもらうと、家族が言うよりすんなり受け入れてもらえることもあります。 専門職の言葉は、家族の言葉より届きやすいことが意外と多いです。
認知症があると、もっと難しいですか?
認知症があると、状況の説明が伝わりにくかったり、同じやりとりを繰り返すことが増えます。 ただ、基本の方向性は同じで、責めずに、選択肢を渡して、環境を工夫するというアプローチが大切です。 認知症のかたへの言葉かけについては、認知症の親に言ってはいけない言葉と、やさしい言い換えにまとめていますので、あわせて読んでみてください。
「暑さを感じにくい」というのは、治りますか?
加齢による感覚や体温調節機能の変化を、完全に元に戻すのは難しいとされています。 そのため、本人の「暑くない」という感覚だけに頼らず、温湿度計で室内環境を確認し、エアコンや水分補給で体調を守ることが大切です。 急に暑さを感じにくくなった、体調の変化があるといった場合は、かかりつけ医に相談してください。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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