介護の仕事

夏祭り、外注していいんですよ

夏祭り、外注していいんですよ

「夏祭りの準備、また今年も休みの日に集まることになった」

「断ったら、利用者さんのことを考えていないみたいに思われそうで」

介護施設で働く方から、こんな声を聞きます。 わたし自身、現場にいたころは、行事の準備が正直しんどかったです。 それでも当日、利用者さんの笑顔が見られるから、やっていました。

今日は、その「しんどさ」だけを減らして、笑顔のほうは残すやり方の話をします。 施設を責めたい話ではありません。「こんなやり方がある」という選択肢を、一緒に見ていきましょう。


こまり
こまり
夏祭り! やぐらとか、かき氷とか、たのしそう。
とも
とも
そうなんです、利用者さんにとっては本当に楽しい行事なんですよね。でも……つくる側のスタッフが、かなり大変な思いをしていることが多くて。
こまり
こまり
大変って、どういうこと?
とも
とも
準備が勤務時間の外で進んでいて、当日も「みんなでやろう」という空気の中で実質ボランティアになっている、ということがよくあるんです。

行事の準備が、なぜか「無償」になっている

介護施設の夏祭りや敬老会、クリスマス会。 どれも利用者さんにとっては、一年の中でも指折りの楽しみです。

問題は、その「楽しみ」をつくるための労力が、業務として正式に扱われていないことがある、という点です。

  • 飾りつけの材料を買いに行くのは、休みの日
  • 出し物の練習は、早出・残業でこなす
  • 当日は「お祭り気分で!」と言われながら、事実上フル稼働

ここで一つ、知っておいてほしいことがあります。

厚生労働省のガイドラインでは、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と説明しています。 そして、それにあたるかどうかは「労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況」などから、個別に判断されるとされています。

つまり、断りにくい空気の中で続けている準備は、本人が「ボランティアのつもり」でも、労働時間として扱われるべき場合があるということです。 実際にどう扱われるかは、指示のされ方や働き方によって変わります。ただ、「無償が当たり前」ではない、というのは知っておいて損はありません。


「断れない」のは、優しいから

こうした状況に「おかしい」と思いながらも、なかなか声を上げられない。 その理由のひとつが、こう言われるからです。

「利用者さんが楽しみにしてるんだから」

この一言は強い。 そして、わたし自身もそうでした。準備は正直しんどい。それでも当日、利用者さんが笑っているのを見ると、「まあ、やってよかったな」と思ってしまう。

その気持ちに嘘はありません。 ただ、利用者さんのために行事をつくることと、そのコストをスタッフが無償で負担することは、別の話です。

「利用者さんが楽しみにしている」は、外注の予算を確保する理由にもなるはずで、 「だからスタッフが我慢していい」にはならない。


以前の職場で聞いた、ある施設長の話

施設の担当者が行事の進め方を穏やかに検討している場面

先日、以前わたしが働いていた施設の方と、話をする機会がありました。 そこで聞いた話が、この記事を書こうと思ったきっかけです。

その施設では、夏祭りをスタッフ総出でつくるのをやめて、外に頼む形に切り替えたそうです。 決めたのは、わたしがいた当時、施設のケアマネジャーをしていた人。今は施設長になっていました。

すごく頭のいい人です。どうすれば施設が良くなるのか、スタッフのためになるのかを、いつも考えている。 その人が、スタッフのことを考えて、この形にしたと聞きました。

そして、なにげなく出てきた話に驚きました。 外注のほうが、お金がかからなかったというのです。

言われてみれば、手作りにもお金はかかります。材料費と、準備にかかった時間ぶんの人件費。 そのすべてがきちんと支払われているとは限らないにしても、ある程度は出ているはずです。 それを足していくと、外に頼んだほうが安く収まることがある。

費用が抑えられて、利用者さんとスタッフの満足度が上がるなら、やらない手はない。 そう聞いて、わたしはすっかり感心してしまいました。

こまり
こまり
つまり、「プロに頼んでいい」ってこと?
とも
とも
そうです。しかも、頼んだほうが安くて、みんなが楽しめることもあるんですよ。

お祭りの運営は、スタッフの仕事じゃない

スタッフと利用者が夏祭りで一緒に焼きそばを食べる温かな場面

ここが、わたしがいちばん伝えたいところです。

やぐらを組むことも、屋台を回すことも、介護の仕事ではありません。 スタッフの仕事は、利用者さんと一緒にいい思い出をつくること。そして、お祭りを盛り上げることです。

裏方として行事を回していると、利用者さんの表情をゆっくり見る余裕がなくなります。 焼きそばを配って、片づけて、次の出し物の準備をして、気づいたら一日が終わっている。

運営を外に出すと、スタッフはその場に「いる」ことができます。 隣に座って、一緒に食べて、一緒に笑う。

利用者さんにとって、行事が楽しいのはもちろんですが、 「一緒に楽しんでいる職員の顔」もまた、お祭りの一部です。

外注は、手を抜くことではありません。 本来の仕事に、手を戻すことです。


仕事は、人生を豊かにするためにある

これは、わたしがずっと言っていることです。

仕事は、人生を豊かにするためにあるものだと思っています。 そして、人生が豊かになれば、仕事の質も上がる。だからこそ、プライベートも大事にしてほしい。

休みの日に飾りをつくって、疲れた体で当日を迎えて、次の日もへとへとで出勤する。 それが毎年くり返されるなら、その行事は、誰かの時間を少しずつ削っていることになります。

行事をなくす必要はありません。 減らすのは行事ではなく、抱え込みのほうです。


こまり
こまり
でも、いきなり上の人に言うのって、こわくないのかな?
とも
とも
そうですね。予算のこともありますし、いきなり通ることは少ないと思います。だから、順番があるんです。

まずは「納涼祭委員会」で提案してみる

夏祭りには、納涼祭委員会のような、行事を考える場が置かれていることが多いです。 まずは、そこで提案してみる。これが現実的な第一歩です。

  • 「全部やめる」ではなく、「この部分だけ頼めないか」という形で出す
  • 今かかっている費用(材料費・準備にかかっている時間)を、ざっくりでいいので並べてみる
  • 今年に間に合わなくても、来年の課題として残してもらう

一度で決まらなくても、話し合いの記録に残れば、来年はそこから始まります。 少しずつ現実のものにしていく。そういう変え方があります。


まとめ

とも
とも
今日いちばん伝えたかったのは、「お祭りの運営は、スタッフの仕事じゃない」ということです。利用者さんと一緒にいい思い出をつくること、盛り上げること。そっちが仕事なんです。
こまり
こまり
外注のほうが安いこともあるって、びっくりした。
とも
とも
わたしも驚きました。まずは委員会で、一言出してみるところからで十分です。今年が無理でも、来年の課題として残るだけで前に進みますよ。

せっかくの、利用者さんの貴重な機会です。 その時間をもっと良いものにしてほしくて、この記事を書きました。

ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して手元に置いたり、委員会で見ながら話すときに使ってください。

夏祭り、外注していいんですよ。運営もスタッフがやる場合と外注した場合の違いと、委員会で提案する3ステップ

この図を保存する(印刷用)


施設で働く方からよく聞かれること

とも
とも
最後に、行事の外注について話すとき、現場のスタッフさんからよく出てくる声をいくつか取り上げますね。

外注費用は、どうやって確保するの?

行事費の考え方は施設によってさまざまですが、まず「今の行事にいくらかかっているか」を並べてみることが入口になります。 材料費だけでなく、準備にかかっている時間も含めて見ると、外に頼んだほうが安く収まることもあります。 「今こうなっているから、こう変えたい」と数字で示すと、話が前に進みやすくなります。

「手作りのほうが喜ばれる」と上司に言われたら?

手作りには、手作りの良さがあります。 ただ、手作りだから喜ばれる、と決まっているわけでもありません。利用者さんは、本物のお祭りを何度も見てきた方たちです。きちんとお金をかけてつくられたもののほうが、満足していただけることもあります

ですから「手作りをやめましょう」ではなく、「この部分だけ頼んでみませんか」と出してみる。 そのうえで、当日の利用者さんの様子を見る。喜んでいただけたなら、それが来年の材料になります。

外注先は、どうやって探すの?

「介護施設 イベント 委託」などで検索すると、介護施設向けのレクリエーション・イベント会社が見つかります。 地域の社会福祉協議会やボランティアセンターに相談すると、地元の演奏グループや学生ボランティアを紹介してもらえることもあります。 まずは小規模な行事で一度試してみると、自施設に合う形が見えてきますよ。

自分一人が「外注しよう」と言っても、変えられる気がしない

一人で変えようとするのは、確かに難しいことが多いです。 まず「共感してくれる同僚を一人探す」ところから始めてみてください。 「わたしも大変だと思ってた」という声が重なると、委員会や管理者への提案がずっと届きやすくなります。あなたの感覚は、きっとひとりじゃありません。

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とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

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